紙たすインク、いこーる本

本が好き、音楽が好き、おやつが好き。自分メモも兼ねた紹介ブログです。

【スポンサーリンク】

少しずつ狂っていく金銭感覚がこわい【紙の月】角田光代

 

紙の月 (ハルキ文庫)

紙の月 (ハルキ文庫)

 

 平凡ないち主婦が莫大なお金を横領した話。

一行で書くとこんな感じになっちゃいますが、金銭感覚や善悪の区別がじわじわと狂っていく過程が詳細に描かれていて、ちょっと怖くなっちゃいます。

 

 

梅澤梨花という女性が主人公です。

専業主婦で窮屈な日々を抜け出し、銀行の営業のパートを始めることにしました。

営業職は自分に合っていたらしく、毎日が楽しいと思えるようになります。

 

あるとき、顧客の孫である青年・光太と会い、誘われて一緒にバーに行きます。久しぶりに軽やかで楽しい時間を過ごし、おまけに自分みたいなおばさん(梨花は41歳)を素敵だよと言ってくれた光太に、梨花はときめいてしまいます。

 

営業の帰り、デパートに寄ったときにふと目に入った高級化粧品。光太の言葉が心に残っていた梨花は、いつもなら決して手を出さないようなそれらを購入することにします。手持ちはありませんでしたが、顧客から預かった金はカバンに入っていました。

何のためらいもなく、梨花はそこから金を抜き出し、料金を支払います。

後で返せばいい。実際そうしました。それで解決でした。そのはずでした。

 

光太と会う機会が増えていくうち、彼への金額は増えていきます。

200万。50万。

はじめは借金の手助けをするだけだったのに、いつの間にか違う用途にも金を工面し始めます。

500万。

ホテルのスイートルーム。

光太のアムステルダムへの旅行代金。

とうとう家賃の28万円のマンションを契約。

いずれも自分の稼ぎではなく、顧客の金。それでもまだ、梨花は返せると思っています。

 

顧客のひとりが、定期を解約したいと申し出てきたときになってはじめて、梨花は渡せる金などないのだと気づきます。

 

でもバレるわけにはいかない。なんとかして金を工面せねば。

横領の自転車操業の始まりでした――――

 

***

 

ホントにこんな感じになっちゃうのかな?脳内警戒警報は鳴らないの??

 

不思議でたまりません。

私は平凡どころか、平凡な生活さえ難しいような底辺の貧民ですが、だからこそシビアです。欲しいと思っても、手が届かない金額ならまず手を出しません。脳内でストップがかかります。貯まるまで待つか、諦めて類似品で安いものを探します。

 

どんなに好きな相手でも、借金を肩代わりしようなんて思いません。だって自分にそんな財力がないと分かっているから。

そこをなんで、「そうなの大変ね……ちょっと待ってて……(そわそわ)」ってなっちゃうのか。なんで払えると思えちゃうのか。これが「狂う」ということなのか。

 

主人公には同情できないけれど、ラストは気になります。

角田さんは気になる終わり方をするのが多い。でも嫌じゃない。

紙の月 Blu-ray スペシャル・エディション

紙の月 Blu-ray スペシャル・エディション