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潔く死に向かえ!! 【百年法 上・下】山田宗樹

 

百年法 (上) (角川文庫)

百年法 (上) (角川文庫)

 

 医療の発展により可能になった不老処置「HAVI」。

この処置を受けると不老不死になります。30歳でHAVIを受けると、その後半永久に30歳の見た目を保つというわけです。すげー。

 

HAVIを受けるかどうかは任意ですが、受ける方が一般的であるというほど、HAVIは日本に浸透しています。むしろ若い女性などは、HAVI適用年齢になるとすぐに受けに行くほどです。今後永久に若いままの見た目というわけですから、そりゃ喜んで処置するよねって感じです。

 

ところが、そういう不自然なことをすると、やはりというか生態系に綻びが出てくるのであって。

不老不死だから、つまり誰も死なないのね……

正確に言えば、HAVI拒否者は普通に老衰死するので、ちょっとは死者が出るのですが、それにしてもちょっとですから。みんなHAVIを受けるので、人口が減らないわけです。

というわけで日本に人が溢れ始めました。

 

困った政府は新しい法律を作ります。それが「百年法」。

HAVIは、百年を限度として適用されるものとする。

つまり、HAVIを受ける者はずっと若いままでいられるけれど、百年経ったら然るべき施設にて死ななければなりませんよ、それを了承したうえで処置を受けてよね、っていう。

 

HAVI希望者は、最初はOKと言って処置を受けます。

しかし、百年目を間近にし始めると、惜しくなってくる。死にたくないと嘆きだす。

そして、逃げだして森の中に身を潜ませる者が出てきます。

黙っていない政府は摘発を進めます。

 

ところが、百年法を成立させ、誰よりも「隠れるんじゃねぇちゃんと死ね」って言ってる大統領の遊佐こそが、なんとか生き延びようとしてるんだから始末に負えないよね。

 

***

 

って話。

 

百年目を目の前にしたときの、登場人物それぞれの反応が興味深いです。

いわゆる葬儀センターに自ら向かうかたちなのですが、「帰る必要がない」ということで、電車の終着点にその施設はあります。

きちんと覚悟を決めて来たけれど、直前になってパニックを起こす者。最後まで冷静、心穏やかでいられる者。そもそも死ぬのを拒否して山に逃げる者。

 

百年イイ思いしたんだから、潔く死にやがれって読んでるこっちは思うんですけど、まあ自殺のようなもんだし、普通の精神状態ではやはりいられないかな。死ぬのは怖いですもんね。

 

でも、ちょっと考えてしまいます。

作中では、「不老(=不死)」については仔細に書いてあったけど、「病気」に関しては説明がなかった気がする。これはどうなんでしょう。

死にはしないけど病気はするよ、ということなら、百年も生きたくないんですけど私なら。

 

一時的な病気なら治るからいいけど、一生付き合わないといけない病気だったら?百年もその病を抱えながら生きていかないといけないって何の拷問でしょう。百年なんか経つ前に50~60年くらいで「もういいや、じゅうぶんだ」って自ら葬儀屋へ行きたいくらいです。そういうパターンのも、ひとつストーリーに組み込んで欲しかったなあ。 

百年法 (下) (角川文庫)

百年法 (下) (角川文庫)