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展開より仕掛けより、「念」がすごい 【死のドレスを花婿に】ピエール・ルメートル

 

死のドレスを花婿に (文春文庫)

死のドレスを花婿に (文春文庫)

 

「その女アレックス」でうおおぉすげーってなったピエール・ルメートルですが。

これは「アレックス3部作」の間に出したものらしく、それも「その女アレックス」の前に出した作品らしいです。

そのためかは分かりませんが、登場人物の女性がそこはかとなくアレックスに似ているというか。

 

ソフィーという女性が中心人物です。フランス小説に限らず、出てくる女性はいつの時代もどの国でも美女と相場が決まっています。ソフィーもやっぱり美女です。

若く美人で、明るく聡明なソフィー。優しい夫と幸せで不自由ない生活を送っています。

 

ところが、あるころから少しずつ様子が変わってきます。

物が消えた。と思ったら、忘れたころに出てくる。物忘れがひどいなと思って、注意するようにした。必要なものを、今度こそはと注意深く準備する。ところが、消える。混乱していると、後日ひょっこりと出てくる。

送信したメールの日付が、自分の記憶と違う日になっている。

停めておいた車がなくなっている。盗難かと思って警察に届けたら、家のすぐ近所に停めてあった。そんなことが頻回に起こるようになります。

 

記憶障害かと思い、薬を飲むようになったソフィー。けれども症状は治まらず、だんだんと鬱っぽくなっていきます。夫との関係にもひびが入り、順調だった仕事にも支障をきたすようになり、ついには職を失います。

 

失意の中、ようやく見つけたベビーシッターの仕事。ところが新しい生活も順調にいきません。継母が死に、夫が死にます。そしてベビーシッターで世話をしていた子どもが死に。どう考えてもソフィーが殺したとしか思えない状況ですが、けれどソフィーには記憶がありません。

 

私は本当に狂ってしまったのだろうか。

混乱と恐怖と絶望に陥ったソフィーは逃亡し、名前を変えて新しい人生を送ろうとします。けれども――――

 

***

 

自分のすぐ身近で、自分の記憶外のことが起こっている。その気味悪さはいかばかりか。何もしていないはずなのに、じわじわと自分が悪者になっていき、追い詰められていく恐怖。

 

けれど、これにはやっぱりカラクリがあって。

カラクリが明かされて先に把握するのは読み手側です。ソフィーはまだ混乱の中です。その時点ではひたすらソフィーが可哀想だし、カラクリそのものがエグすぎて、眉間に皺入れて読む感じです。

 

そして。

なにがすごいかって、このカラクリに気づいたあとのソフィーの反撃。

このあたりの、「冷静で、冷えてて、強い女性」像は、この後に出るアレックスに通ずるものがあります。(「冷静」と「冷える」とは、いまは別ものとして捉えてください)

強いと言っても、スーパーマンみたいな「パワー」の強さではなくて、「頭脳」。

後半の転がるような反撃劇。「許さない」という念が、ただただソフィーを動かしている感じです。

 

ピエール・ルメートル特有のこの「強い女性」、私はとても好きです。

 

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