紙たすインク、いこーる本

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ただ「生きる」ということの、なんと難しいことか 【あん】ドリアン助川

 

([と]1-2)あん (ポプラ文庫)

([と]1-2)あん (ポプラ文庫)

 

ドリアン

 

なんだこのペンネーム馬鹿にしてんのか

 

と思ったら、全然馬鹿になどしていない作品であった。

むしろ……

 

千太郎という若者。どら焼き店の店主です。疲れています。

一生懸命やっても良いことないなあ、疲れたなもう。

それを言い訳にしたらいけませんが、千太郎の「あん」を作る手は適当です。

適当に作ったどら焼きは適当にしか売れません。売れ行きの悪さに千太郎のテンションは下がります。お前が悪いんだろって話ですが、とりあえずなんかダメダメです。

 

そこへ徳江という名の老婆がやってきます。

求人を見て来ましたという徳江。彼女が作ったというあんを食べて、千太郎は驚きます。誰が食べても一発で分かる。こんなに美味しいあん。和菓子屋をしていないのが意味不明なレベル。なんで今までこの人はフリーだったのか。

 

徳江があんを作るようになって、どら焼き屋は劇的に繁盛し始めます。

徳江は決して天狗にならず、いつも丁寧にあんを作り、丁寧に挨拶をして、ひとり帰っていきます。

 

ある日、徳江に「悪い噂」が立ちます。

その日から徳江はぱたりと店に来なくなります。

 

千太郎は、いつも徳江が帰っていくあの道を行ってみることにします。

徳江はどういう人生を送ってきたのか。

そこにあったのは――――

 

***

 

ネタバレになりますが、ハンセン病患者のその後を絡めた話です。

完治しているのに、感染の心配はないと周知されているのに、それでも避けられる。差別の対象となる。この理不尽を描ききった作品です。

 

差別ダメ!

日本の道徳として、ことあるごとに教え込まれる「平等の意識」。

 

それはきちんと身に付いているだろうか。

自分は絶対にそんなことをしない人間だと言い切れるだろうか。

いざ元患者の方が目の前に来たとして、僅かでも怯んでしまうなら、私の「差別に対する意識」は偽善ということにならないか。

 

読了後、目を伏せて静かに己に問いかけてしまう1冊です。

あの塀の内側の日常も知ることができて、大変ためにもなります。

 

↓ドラマにも。樹木さんの演技が本当にすごいと評判を読んだようです。

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