紙たすインク、いこーる本

本が好き、音楽が好き、おやつが好き。自分メモも兼ねた紹介ブログです。

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永遠に繰り返される15時15分 【ターン】北村薫

 

ターン (新潮文庫)

ターン (新潮文庫)

 

 好きです(告白)

 

10年以上前のこと、ブックリサイクルで手に入れたのが出逢ったきっかけだったような。

著者(=北村氏)のことも知らず(すみません)、もちろんこの作品も知らずという、前情報いっさい無しの状態で読んだのですが、良かった。

 

良かった。

(2回言った)

 

銅版画家の真希という女性が主人公です。彼女が事故に遭うところから、話は始まっていきます。

夏の午後。ダンプと衝突した真希は、しかし気が付くと自宅で座椅子に座り、眠っていたことに気が付きます。ゆるっと、気持ちの良いまどろみ。ふっと寝て、目が覚めたという感じです。

 

自分は今事故に遭ったのではなかったか?

真希は混乱しますが、周りはいつもどおりの家、いつも通りの窓の外です。時計は15時15分を指しています。

 

いつも通りではないと気付いたのはその直後。

 

この世界には、真希ひとり以外、誰もいませんでした。

 

そして、理解できないことがもうひとつ。

 

どんな一日を過ごしても、どんなに遠くへ行っても、定刻が来ると一日前の座椅子に戻ってしまうのです。15時15分。それが「ターン」の時間。一瞬にして、真希は「座椅子でまどろみから覚める」状態に戻るのです。

 

いつかは元の世界に帰れるのだろうか。

それともこのまま、永遠に?

 

「ターン」が150日を過ぎた午後。

突然、電話が鳴り始めました。――――

 

***

 

 

読みはじめたら止まらなかった。

 

毎日、「同じ日、同じ時刻」を繰り返す。これを主人公は「くるりん」と名付けていましたが(かわいいww)、良くも悪くも「くるりん」のせいで、「無かったこと」になるわけです。

 

極端な話、誰もいないことをこれ幸いにと、銀行へ行ってお金を山ほど盗って帰っても、「くるりん」の時間がくれば、1日前の状態に戻る。お金は銀行に戻る。

そういう意味では、犯罪を起こせない(起こしても意味がない)。

 

けれど、逆に「良いこと」をしても、それはやっぱり「無かったこと」になるわけで。

部屋を片付ける気にならない、だってどうせ「くるりん」がきたら、片付ける前に戻るんだものみたいなことを作中で主人公がぼやいていますが、なるほどやる気がなくなりますね。

 

幸いにもというか、経験・記憶だけは「くるりん」に当てはまらず累積(?)していけるようです。主人公は「くるりん」が来たら、目覚めてすぐに手近のメモ帳に何日目かを記す習慣を付けるようになります(そのメモも「くるりん」が来たら「無かったことになる」ので、毎日新しくメモを取る感じ)。

 

そうして150日目を数えた日に、突然自宅の電話が鳴り始める、という。

 

船の影見つけた!!!(in 無人島)

 

たぶんきっとこんな気持ち。

 

電話の相手がヤのつく人だろうと詐欺師だろうと、見つけたこの希望の光を絶対に逃してはならないという、人目を気にしていられない必死さがものすごく伝わってきます(人目ないけど)。

まあそこはステキ小説なのでね、当然電話の相手はね、うんめいのあいてなんですけれども(ネタバレすみません)

 

あと、女性の心理描写がとても女性らしい(表現がおかしい)のも注目したいところ。

北村氏のことを知らずに読んだので、最初は女性作家だと思っていました。男性と知ってたまげたわ……

 

混乱、焦り、冷静を取り戻していく様子、諦め、そして希望を掴んで動くさまを、柔らかに書き上げているのが見事というか。

 

ラストがくすぐったくて、「んふゥ」って変な声が出ます(真顔)

 

これ、「時間と人」をテーマにした3部作というやつで、ほかにも「リセット」「スキップ」とあります。どれも好きだけれど、これがいちばん好き。

 

スキップ (新潮文庫)

スキップ (新潮文庫)

 

 

リセット (新潮文庫)

リセット (新潮文庫)