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色や粘度や臭いまで立ち上ってきそうな 【悲しみのイレーヌ】ピエール・ルメートル

 

 

悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)

悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)

 

以前、「その女アレックス」をご紹介しましたが、同じ作者のものです。

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 実は、「アレックス」は連作だったようです。「アレックスが主人公の連作」ではなくて、アレックスを追うカミーユ・ヴェルーヴェン警部を主人公として連作になっています。こちらがデビュー作で、「アレックス」は2作目らしい。

 

「アレックス」が先に翻訳出版され、それで爆発的に人気が出たために1作目(加えて3作目も)を翻訳出版したということで、日本語訳を読んだ方は必然的に「アレックス」のほうを先に読み、続いて1作目と3作目を読むという流れになったと思います。私ももちろんその一人です。

理想は1作目から読むことですが、これはもう仕方ないかな。

「アレックス」を先に読んでいても楽しめます。

 

カミーユ警部にはイレーヌという妻がおり、生まれてくる予定の赤ちゃんを楽しみにしています。

そんなところに新たな殺人が起き、カミーユは同僚とともにこの事件を担当することになります。

事件は凄惨を極めるもので、腹は裂かれ、折れた肋骨は乳房を貫き、目は焼かれ、口から血管が飛びだしていました。壁には「おれは帰ってきた」と書かれた血文字。そしてくっきりと指紋が残されています。

 

捜査を進めるうちに、指紋はスタンプであることと、同じ指紋が過去に起きた未解決の虐殺事件の現場にも残されていたことが分かります。そして、過去の事件はとある小説を模倣したものであることも分かってきます。

ということは、今回も何かの小説を真似ているのではないか。カミーユたちは必死になって小説を探します。

 

そうしているうちに、カミーユの妻が連れ去られる事件が発生。ほぼ同じくして、今回の事件の模倣元となった小説を突き止めます。この小説に倣って、犯人はカミーユの妻を殺そうとしている――――カミーユは全力で妻と犯人を追いますが……

 

***

 

デビュー作って何だっけって言いたくなるようなやつ。

ストーリーの疾走感やダークさももちろん見事なんですけど、すごいのは凄惨な場面の描写。

飛び散った血痕や立ち込める生臭さ、溜まった血だまりの粘り気、内臓の色や温度さえも感じられるような鮮明さ。元言語で読んでもこうなのか、それとも翻訳者がすごいのか分からないけど、とにかく表現がすごいです。

 

思い返せばアレックスもそうだったけど、微グロ描写を書くことに何のためらいも見せないのは作者の性質なのかそれともフランスの小説ってみんなこんな感じなのか。

 

タイトルに「悲しみのイレーヌ」って壮大なネタバレをやらかしちゃっているので、結局妻は無事だったのかなんて推して知るべしですが、結果が分かっていても先が気になってどんどんページをめくってしまう作品です。おためしあれー。