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一貫して漂う「寂しさ」と「冷たさ」。【熊と踊れ 上・下】アンデシュ・ルースルンド

 

熊と踊れ(上)(ハヤカワ・ミステリ文庫)

熊と踊れ(上)(ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: アンデシュ・ルースルンド,ステファン・トゥンベリ,ヘレンハルメ美穂,羽根由
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/09/08
  • メディア: 文庫
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  3年くらい前でしたっけ。

本屋大賞の海外作品部門にこれが入ってたんですよね。

 

好きな作家というわけではなく(むしろこのとき初めて知った)、本屋大賞を取って話題に上がったから読もうと思ったわけでもなく、じゃあなんで読もうと思ったかって、訳者がヘレンハルメ美穂さんだというので飛びついただけのことでした。

 

ヘレンハルメ美穂さんの訳、すごく好きです。

小説って、その国ならではの文化とか習慣とかからくる独特の言い回しとかジョークとかがあって、それって結構な割合で他国の読者には伝わらなかったりする。残念なことだけど。

これを他国の読者にどう表現して伝えるかが、訳者の腕の見せどころと思うんですが、ヘレンハルメさんはこれが秀逸なのです。

 

そのまま訳すとおそらく日本人には伝わらないようなニュアンスや言葉を、日本人の感覚に極めて近付けた表現で書き表している。だから、ものすごく読みやすい。

ヘレンハルメさんの訳書で代表的なのはやっぱりあれだと思います。これ↓

 

【ミレニアム】(ダヴィド・ラーゲルクランツ)

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

今回の「熊と踊れ」も、ぶあっつい上下2巻だし、「ミレニアム」なんてどこまで続いてくれるのかって思うくらい長編大作ですが、それでもスラスラスラスラ行けてしまうのは絶対ヘレンハルメさんの功績だと思うの。ヘレンハルメさん効果78%くらい。

 

……話が逸れました。

 

で、「熊と踊れ」。

 

これ、実際にあった事件をベースに作られてるらしいです。

4人の若者が連続銀行強盗事件を計画する。時間を置かず連続する容赦ない襲撃に、執念を燃やして立ち向かうスウェーデン市警のブロンクス警部。

犯行当時のビデオなどを見ていくうちに、警部はこの4人の関係性に気づきはじめる。

兄弟3人と、その友人1人。グループのリーダーは一番上の兄であると。

はたして「勝つ」のは兄弟か、警察か――――

 

***

 

なんというか、寂しくて寂しくてたまらない作品です。

やってることは犯罪で、犯人 VS 警察で、作中では銃ガンガンパトカーギャンギャンで、怒鳴り声と激しい息遣いと喧嘩と喧騒と悲鳴とで満ちているのに、最初から最後まで一貫して漂っているのが「どうしようもない寂しさ」

 

こうなるまでの兄弟の過程とか、兄の弟たちへの想いとか葛藤とかが描かれていて。

それを見てしまうと、犯罪者なのに「捕まってほしくない」とか思ってしまう。

なんか他に方法はなかったのかなあ、どうしようもなかったのかなあとか考えたり。

 

物語に一役買っているのが、「雪」です。

しんしんと降り積もる冷たい北欧の雪が、寂しさを一層際立たせていて切ない。

ラストなんてもう泣きたい。

 

ああ!兄ちゃん!逃げて……!!

 

って犯罪者相手に思ってしまうって、なんだっけこれ、

吊り橋効果? 

熊と踊れ 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

熊と踊れ 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

続編も出ているらしいので読みたいです。↓ いや読みます。

兄弟の血―熊と踊れ? 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

兄弟の血―熊と踊れ? 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: アンデシュルースルンド,ステファントゥンベリ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/09/30
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