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納得してしまう自分にギョッとする。【廃用身】久坂部羊

 

廃用身 (幻冬舎文庫)

廃用身 (幻冬舎文庫)

 

この小説が出たのは10年以上も前のことですが、読んだ時に受ける衝撃は今も色褪せないと思う。

読了後、何とも言えない虚脱感からしばし動けなくなるほどに。

 

「廃用身」とは、脳梗塞などで麻痺が残り、機能せず回復の見込みもない手足のことをいうそうで、介護現場で使われる医学言語のようです。

この廃用身を持った患者とその周囲の者が抱える闇。介助問題がテーマになってきます。

 

例えば麻痺が両足に残った男性患者。子どもではない、成人した男性の体重、例えば80キロだとします。介助する側は毎日この80キロを支えていろいろしなければならないわけです。車椅子に乗せる、車椅子を押す、抱えてお風呂に入れる、抱えてお風呂から上げる、勿論排泄の世話も。

 

本人自身が動く方法としては、這うしかない。

機能せず、力の全く入らない両足を腕の力だけで引っ張るのも相当な労力がいるわけで。

 

この身体の重さに介助する側は疲れてしまう。次第に介助の頻度は必要最低限でしかなくなってきてしまう。そうなると、あまり動かされないため、今度は患者の身体に床ずれができてしまい、本人は苦しむことになる。悪循環というか、抜け出せない地獄にはまるこの感じ……。

 

神戸で老人医療にあたる医師・漆原は、この悩める問題の画期的な療法を思いつきます。

 

「その両脚、なくなれば良くない?」

 

(MA JI  KA)

 

両脚なくなれば、体重が約半分減る。

80キロが、40キロに。

介助する側の体力的な負担は減り、本人も自重を支えるのが楽になりはしないか。

 

ゾッとする解決法ですが、ある意味納得もできる。

 

この提案に賛同・同意する患者が現れ始め、漆原は次々と廃用身を切断していきます。結果としては、良いことだらけ。家族も患者本人も負担が減り、絶望していた「介助の闇」に、光があたった――――

 

…………こういった「新しい医療の在り方」を、やがてマスコミが嗅ぎつけることになった。漆原医師は患者を平気で切断する「悪魔の医師」として告発されていく――――

 

***

 

これはおそらく、介助問題に面したことのある方なら誰でも一度はちらりと考えたことがあるのではないかと思う。

 

人の身体って重い。

しかも、成人していれば身体のパーツひとつひとつがでかい。赤ん坊を世話するのとはわけが違う。

 

アモーレをお姫様だっこして幸せに浸る()とか、そういうのとは次元が違う。

 

ただ、モラルや良心や体裁や外聞みたいなもので蓋をして、その昏い気持ちを絶対に外に出さないようにする。

 

フィクションだからこそ、その昏さを曝せた小説だと思います。

 

あと、作りが凝り過ぎてて最後まで気づかない人多数です注意(私のその中の一人であった)!

なんでこれが「小説」の棚に並んでるんやろ??と思っていましたやられました流石です!!